要約

えごま油・亜麻仁油に多いα-リノレン酸は二重結合を3つ持つ多価不飽和脂肪酸で、熱・酸素・光の影響を受けやすい性質があります。そのため焙煎せず生のまま搾り、小容量で流通させる形が一般的です。生えごまの搾油では予熱70〜80°C・30分以上、油粕の厚さ約0.5mmが公開されている運転条件で、搾油率はごま48〜51%、生えごま35〜38%です。

えごま油や亜麻仁油は、焙煎せずに生のまま搾る「生搾り」で扱われることが多い油です。国産のえごま油は50〜110g程度の小容量で流通し、「毎月搾油」「受注生産」と表示された商品も少なくありません。搾ってから使い切るまでの期間そのものが商品価値になっているためです。

これは油の成分そのものではなく、その化学的な性質によるものです。本記事では、多価不飽和脂肪酸が酸化しやすいという物性から出発して、生搾りの運転条件と種子別の搾油率を整理します。焙煎するごま油との違いも並べて示します。

なぜえごま油・亜麻仁油は生搾りなのか — 酸化しやすさという前提

えごま(荏胡麻)や亜麻仁に多く含まれるα-リノレン酸は、n-3系脂肪酸(オメガ3)に分類される必須脂肪酸です。体内では合成されない脂肪酸です。

搾油の設計で重要になるのは、その化学構造です。α-リノレン酸は分子内に二重結合を3つ持つ多価不飽和脂肪酸で、二重結合の数が多い脂肪酸は熱・酸素・光の影響を受けやすく、酸化が進みやすい性質があります。飽和脂肪酸が主体の油と比べて、工程中の温度と、搾油後の保管条件の両方が品質に直結します。

市場での扱い方にもこの性質が表れています。えごま油は遮光瓶に詰められ、小容量で販売され、開封後は1〜2か月程度で使い切ることが一般的に推奨されています。加熱調理ではなく、そのままかける調味油として扱われることが多いのも同じ理由です。

つまり、えごま油・亜麻仁油の事業では「大量に搾って在庫する」設計が成り立ちにくいということになります。少量を高い頻度で搾り、搾りたてを出荷する形が商品設計と整合します。設備を選ぶ際は、最大処理能力よりも、少量を安定して搾り続けられるかが基準になります。

生搾りと焙煎搾りの運転条件

生搾りは「加熱しない」という意味ではありません。原料を搾油可能な状態にするための予熱は行います。焙煎して香りをつける工程を行わない、という区別です。

項目生えごま(生搾り)焙煎ごま
焙煎工程なしあり(170°C以下を推奨)
予熱温度70°C(夏)〜80°C(冬)ヒーター 130°C・3区間
予熱時間30分以上30分
油粕の厚さ約0.5mm0.5〜0.6mm
搾油前の原料温度—冷却して70°C以下
風味の方向種子本来の風味、シソを思わせる香り焙煎由来の香ばしさ

予熱温度に季節差があるのは、原料温度と外気温の関係で搾油時の油の流れが変わるためです。夏は70°C、冬は80°Cが公開されている条件です。予熱時間は30分以上を確保します。

油粕の厚さは搾油率と品質の両方に関わります。生えごまでは約0.5mmが基準です。薄く搾れば搾油率は上がりますが、圧力と温度の負荷も上がるため、公開されている条件から外れる設定は避けてください。

焙煎工程を含む場合、焙煎後の原料は冷却して70°C以下にしてから搾油します。冷却せずに投入すると圧搾筒の破損につながります。ごまの焙煎そのものは170°C以下が推奨されています。

低温圧搾(コールドプレス)で管理する温度

当社が公開している冷圧搾の運転条件は、機械温度70〜80°C、油の温度が50〜55°Cです。

日本では「コールドプレス(低温圧搾)」に何度以下という統一定義がありません。表示だけでは比較できないため、実際の油温が数値で公開されているかを確認する必要があります。数値が示されていれば、導入後に実際の原料で検証できます。

種子別の搾油率と搾油のポイント

搾油率は原料の産地・水分・保管状態で変動します。以下はナショナルエンジニアリングの基準値です。事業計画では、自社の原料で試搾りを行った数値を使ってください。

種子搾油率(当社調べ)搾油の方式留意点
ごま48〜51%焙煎搾り/生搾り焙煎後は70°C以下に冷却してから搾油
えごま(生)35〜38%生搾り予熱70〜80°C・30分以上、油粕約0.5mm
亜麻仁約30%生搾り搾油率が低いため原料コストの比重が大きい
くるみ約54%生搾り油分が多く、搾油率は高い
椿の種30〜45%生搾り原料の状態による幅が大きい

参考として、種子そのものの油分含有量はごまが50〜55%、えごまが40〜45%です。含有量と搾油率の差が、油粕に残る分と工程ロスに相当します。

搾油率の読み方

搾油率だけで機種や原料を判断すると、事業計画を誤ります。

  • 亜麻仁は搾油率が約30%です。原料100kgから約30kgの油という計算になり、原料コストの比重が他の種子より大きくなります。
  • えごま(生)は35〜38%で、焙煎するごま(48〜51%)より低い水準です。生搾りは焙煎搾りより搾油率が下がる傾向にあり、その差が風味と鮮度という価値に反映されています。市場でも生搾り表示の商品は価格帯が上がる傾向があります。
  • くるみは約54%と高い一方、原料の入手量と単価の制約があります。

主軸とする原料の搾油率と原料単価を先に置いて、必要な処理能力を逆算する順序が確実です。

前処理で搾油率が変わる

えごまは種皮を除くかどうかで搾油の条件が変わるため、えごま脱皮機を工程に含める構成があります。異物が残ると搾油機の負荷になるため、石抜き機での選別も前提工程です。搾油率は搾油機単体の性能ではなく、選別・洗浄・予熱までを含めた工程全体で決まります。

熱風洗浄による風味の差別化

生搾りでは焙煎という香りづけの工程がないため、前処理の差がそのまま風味に出ます。

種子の洗浄には水洗いが用いられることがありますが、水分が残った状態で搾油工程へ送ると、乾燥に時間がかかり、その間に原料の状態が変わります。ナショナルエンジニアリングは熱風で種子を洗浄する乾式洗浄の方式について特許を取得しています。水分を残さずに次工程へ送れるため、風味の再現性が保ちやすくなります。

焙煎ごま油では、この前処理により油っぽさを抑えた香ばしさの方向に寄せられます。生搾りのえごま油・亜麻仁油では、種子本来の風味を不要な工程を挟まずに搾ることに寄与します。

搾油専業メーカーとしての実績

ナショナルエンジニアリングは1970年の創業以来、搾油機に専業で取り組んでいます。コールドプレス搾油機については韓国特許第10-2449471号(2022年9月27日登録)、油圧式搾油機については韓国特許第10-1614082号(2016年4月14日登録)を保有し、特許は50件以上、輸出先は100か国以上です。コールドプレス搾油機の開発はドイツに続く世界4番目(当社調べ)としています。

生搾りのように運転条件の幅が狭い搾油では、条件を数値で公開しているメーカーかどうかが、導入後の再現性に関わります。

搾油機の仕様や運転条件については、会社紹介ページからお問い合わせください。

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