要約

通販サイトで「業務用」と表示される搾油機の多くは、毎時数kgの卓上型です。事業として毎日搾る場合は、毎時処理能力・連続運転の可否・電源仕様・設置寸法・部品供給の5点を仕様書で確認します。六次産業化・地産地消法の総合化事業計画は現在も認定申請を受け付けており、申請書類に施設整備の内容と資金計画を記載するため、機種選定と見積は申請より前に進めます。

自家搾油所の開業を計画する段階では、「どの搾油機を導入するか」と「どの制度で認定を受けるか」を並行して決める必要があります。ところが通販サイトで「業務用搾油機」と表示されている機械の多くは、処理能力が1時間あたり数kgの卓上型です。毎日搾り続ける事業用とは設計の前提が異なります。

本記事では、事業として成り立つ業務用搾油機の条件と、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定手順を、公開情報に基づいて順に整理します。ごま油・えごま油・亜麻仁油などを自社で搾って販売する6次産業化を検討されている方を想定しています。

業務用搾油機に求められる条件 — 卓上型との違い

「業務用」という表記には基準がありません。通販で並ぶ卓上型のオイルプレスは1時間あたり6〜13kg程度で、連続運転を前提としない設計のものが多く、原料の洗浄・焙煎・濾過といった前後の工程も含まれていません。事業用として検討する場合、仕様書で確認すべき項目は次の5点です。

  • 毎時処理能力 — 原料の種類ごとに数値が変わります。「ごま○kg/h」のように原料名とセットで示されているかが判断材料になります。
  • 連続運転の可否 — 1回投入ごとに停止する方式か、連続で投入できる方式かで、1日の生産量が大きく変わります。
  • 電源仕様 — 三相電源の電圧・周波数、消費電力。国によって標準が異なるため、日本国内での設置条件はメーカーへの確認が必要です。
  • 設置寸法と重量 — 搾油機本体だけでなく、前処理設備・タンク・作業動線を含めた面積で計画します。
  • 部品供給と保守の体制 — 消耗部品を継続して入手できるか。搾油専業メーカーかどうかがここに表れます。

ナショナルエンジニアリングの機種別の処理能力は次のとおりです。

機種毎時処理能力投入方式消費電力本体寸法(cm)重量
コールドプレス 15kg焙煎ごま 15kg / 生えごま 12kg連続5.6kW97×83×140300kg
コールドプレス 30kg焙煎ごま 30kg連続7.3kW120×85×132350kg
コールドプレス 100kg焙煎ごま 100kg / 生えごま 80kg連続9.2kW168×104×145480kg
油圧式 2発 安全型(精製タイプ)ごま 30kg1回投入 6kg2.9kW88×120×148950kg
油圧式 4発 安全型ごま 35kg1回投入 8kg4.4kW104×109×1742,300kg

※電源仕様および設置条件は各機種の仕様書をご確認ください。

同じ「毎時30kg」でも、連続式は投入を止めずに搾り続けられるため、1回投入式とは日産量に差が出ます。稼働時間から必要処理能力を逆算する際は、この差を織り込む必要があります。

6次産業化の進め方 — 総合化事業計画の認定と設備投資の順序

農林漁業者が自ら加工・販売まで手がける取り組みは、六次産業化・地産地消法に基づく制度として整備されています。農林水産省は現在も「総合化事業計画」および「研究開発・成果利用事業計画」の認定申請を受け付けています。

総合化事業とは、農林水産物等の生産と、その加工または販売を一体的に行う事業活動です。搾油であれば「自ら栽培したえごまを搾り、自社ブランドとして販売する」という形が該当します。認定の対象は農林漁業者、またはその組織する団体です。

相談先と申請の流れ

申請を希望する場合の相談先は、各地方農政局・北海道農政事務所・沖縄総合事務局の総合相談窓口です。県域拠点でも相談を受け付けています。オンライン申請は農林水産省共通申請サービス(eMAFF)から行えます。

ここに実務上の要点があります。総合化事業計画の申請書類には、「総合化事業の用に供する施設の整備の内容(別表1)」と「必要な資金の額及びその調達方法(別表3)」が含まれます。つまり、機種の選定と見積の取得は、認定申請より前に済ませておく必要があるということです。制度を調べ終えてから機械を探すのではなく、並行して進める段取りが現実的です。

順序やること相手
1事業構想の整理(原料・規模・販売先)自社
2機種選定と見積の取得、設置条件の確認搾油機メーカー
3制度の適用可否と計画の方向性を相談地方農政局等の総合相談窓口
4計画書の作成(別表1=施設整備、別表3=資金計画)自社/窓口の助言
5認定申請(eMAFF または窓口経由)農林水産省
6設備の発注・設置・稼働搾油機メーカー

計画作成にあたっては、農林水産省が「総合化事業計画作成のためのガイドライン」および認定に関するQ&Aを公開しています(2026年7月時点の最新はR6.10月版)。

認定を受けると何が変わるか

認定に伴う措置として、農業改良資金融通法・農地法・都市計画法・野菜生産出荷安定法の各特例が用意されています。加工施設や販売施設を新たに建てる場合、農地や都市計画上の手続きが関わるため、施設整備を伴う搾油事業では実務的な意味を持ちます。

設備投資の支援制度について

設備投資を支援する補助制度は、年度ごとに名称も枠組みも変わります。中小企業向けの設備投資補助金は2026年に再編が行われており、過去の記事や解説サイトに載っている制度名がそのまま使えない場合があります。

そのため、制度名を前提に計画を組まず、①地方農政局等の総合相談窓口、②中小企業庁の補助金公募情報ページ、この2か所で現在の制度と要件を確認する進め方を推奨します。補助率や上限額、公募回次は最新の公募要領が基準になります。

規模・原料別の機種選定 — 処理量と前処理設備の組み合わせ

搾油機は単体では完結しません。搾油所の開業計画では、原料の洗浄から充填までの一連の流れを設計してはじめて、計画した生産量になります。

規模から考える

  • 小規模(直売所・自社ブランド立ち上げ期) — 毎時10〜15kg級。少量多品種に向き、原料を切り替えながらの試作にも対応します。
  • 中規模(安定した定期出荷) — 毎時30kg級。焙煎機・熱風洗浄機と組み合わせ、1日の生産量を確定させる段階です。
  • 大規模(加工受託・OEM を含む) — 毎時100kg級。連続運転を前提に、集油・清澄タンクと搬送を含めたラインで設計します。

前処理・補助設備

工程設備役割
選別・洗浄石抜き機、熱風洗浄機異物除去、種子表面の洗浄
焙煎焙煎機(基本型・大型)ごま油など焙煎を要する原料の風味づくり
搾油搾油機(コールドプレス/油圧式)圧搾
集油・清澄集油タンク、静置・清澄タンク(SUS)油分の受け・沈降・清澄
前処理補助えごま脱皮機、粉砕機、真空搬送機原料条件を整える/工程間の搬送

原料によって必要な工程は変わります。焙煎して香りを立てるごま油と、焙煎せず生のまま搾るえごま油・亜麻仁油では、焙煎機が必須か否かが分かれます。主軸とする原料を決めてから設備構成を固める順序が確実です。

収油率と品質を決める運転条件 — 冷圧搾と熱風洗浄

「コールドプレス」に統一された温度定義はない

日本では「コールドプレス(低温圧搾)」について、何度以下という統一された定義が定められていません。そのため、以前より低い温度で搾っていれば低温圧搾と表示できる状態にあります。機種を比較する際は表示ではなく、実際の油温が仕様として公開されているかが判断材料になります。

当社が公開しているコールドプレス機の運転条件は、機械温度70〜80°C、油の温度が50〜55°Cです。数値が明示されていれば、導入後に実際の原料で検証できます。

生搾りと焙煎搾りの運転条件

項目生えごま(生搾り)焙煎ごま
予熱温度70°C(夏)〜80°C(冬)ヒーター 130°C・3区間
予熱時間30分以上30分
油粕の厚さ約0.5mm0.5〜0.6mm
焙煎工程なし170°C以下を推奨

焙煎した原料は、冷却して70°C以下にしてから搾油します。冷却せずに投入すると、圧搾筒の破損につながります。ごまの焙煎自体は170°C以下が推奨されています。

種子別の収油率(当社調べ)

種子収油率
ごま48〜51%
えごま(生)35〜38%
亜麻仁約30%
くるみ約54%

収油率は原料の産地・水分・保管状態によって変動します。上記はメーカー基準値であり、事業計画では自社の原料で試搾りを行った数値をお使いください。

熱風洗浄という前処理

水洗いではなく熱風で種子を洗浄する方式は、ナショナルエンジニアリングが特許を取得している乾式洗浄の技術です。水分を残さずに搾油工程へ送れるため、風味の面で違いが出ます。焙煎ごま油で油っぽさを抑えた香ばしさを狙う場合の前処理として位置づけられます。

搾油専業メーカーとしての実績

ナショナルエンジニアリングは1970年の創業以来、搾油機に専業で取り組んでいます。コールドプレス搾油機については韓国特許第10-2449471号(2022年9月27日登録)、油圧式搾油機については韓国特許第10-1614082号(2016年4月14日登録)を保有し、特許は50件以上、輸出先は100か国以上です。コールドプレス搾油機の開発はドイツに続く世界4番目(当社調べ)としています。

事業として搾油に取り組む場合、機械の性能と同等に、部品供給と保守の継続性が重要になります。搾油専業として長く続けているメーカーかどうかは、その判断材料のひとつです。

搾油機の仕様や導入については、会社紹介ページからお問い合わせください。

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